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成仏とは  2002-5-12 大阪法座

皆さん、今日もお集まりいただきまして、本当に有難うございます。
実は今、私は正月からこっちへ、あることで正法というものの、27年間をいろいろと反省させてもらって来ました。

人が成仏する、とはどういうことか?
成仏する、成仏したい、といいますが、それは一体どうすれば成仏できるのだろうか?
又、巷でよくいうポックリさんとは、どういうことか?死ぬときはなるだけ苦しまずポックリいきたい、と人は言い、ポックリ寺に参る。そうだろうか?

ポックリさんの原理とは?

ある女性が若い男性に、結婚資金や老後の資金に貯めたお金を騙し取られてしまったのです。そして運命のなかで、乳ガンになり手術をして、女性の機能も失いました。さらに阪神大震災で家がなくなり、独りいる姉さんの家に寄留した。その後、母親も亡くなった。

母親は生前、その娘を見て死ぬにも死ねんといった。
「お前には何にもようしたげんと、むごい人生を送らせて、こんな目に遭わすのやったら産んでやるんやなかった。お前だけは心配じゃ」というて泣いた。
しばらくして定年退職した。全てを失い、この世への執着するものが全部とられていたのです。
お母さんが死んで三回忌の頃でした。その彼女に向かって「今こそチャンスだから、本気で禅定してみなさい」と僕は勧めたのです。

そしたら家で禅をする彼女のまわりにつむじ風が起こって、その中心に自分が吸い上げられそうになった。その通り道のことをいわゆるワームホールといい。我々はドライパイプと呼ぶ。
身体が浮き上がってきた。安定が悪い。こわいよぉ~と思ったら、ドスンと落とされた。びっくりして目を開けたら、部屋の中は今までのつむじ風もなく紙一枚飛んでいない。何もない普通でした。

後日、そのことの報告を受けました。
「あれは何ですか?」「それはあの世に招待をうけたんや」
「えっ、あの世に招待をうけたんですか?そしたら死んで帰ってこないということですか?」
「帰りたいか?この世に何の未練があるの?お金はない、家はない、女子でない、母は死んでしまう、定年で仕事もない。あなたにとって、この世に戻って何がいいの?何の未練があるの?あなたをこの地上に打ち付けていた、執着というクギが全部抜けた。だから軽くすっと行けた。実はあなたに対して神仏が、悔いて死んでいった母親に会わせてやろうという計らいが、あなたを引っ張ったのや。何でそのまま行かなかったのや」と私は言いました。
これが本当のポックリさんです。

よく老人が「ポックリ寺で祈願してもらった」といわれるが、そんなことでポックリと死ねるのではなく、その老人がこの世に何の未練も執着も、心残りもなくなって、この世につなぎ留めるている、煩悩や執着のクギが全部抜けたら、期せずして、魂が肉体から抜けるのが、ポックリさんの原理なのです。

子供が独り立ちし親離れしていく。自分の主人が死んでいく。兄弟も死んでいく。友だちも死んでいく。とうとう独りぼっちになった。正にあの世に往生、成仏できる条件が整ったということです。
自分の人生が済んでしまうのです。そのときは、あの世にもっとも近いのです。どっちでもいいわ。と思ったときにスーと上がっていくのです。ひとつでも思いが残っているときは死ねません。
そういうふうに成仏するということです。

前にもこんなこと言ったことがあります。
「今やったら苦しまんと、すっと引き取ったげる。あるいは10年長生きする、その代わりにのた打ち回って苦しんで死ぬ、どっちにする?」って言うと、「今、死にたい」と言われる。
人間はみな、苦しまずにポックリ死にたいと思っています。
ポックリさんの原理を持っておられるのです。

 

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