ヒトゲノム[膨大な人間の遺伝子暗号]の解読は、到底無理と言われていたが、現代のコンピュータの驚異的な発達によって、ついに解読に成功した。
宗教は一人の聖者が現れて、根幹の真理や法を説き、弟子たちがその真理や法を枝葉末端に向かって分派分裂を繰り返して本質を見失うのに反して、科学は反対に、枝葉末端から科学者の総合力によって根源の真理に向かう。
今、科学は爆発的なスピードで発達し、あらゆる分野を埋め尽くしていく。そこで生命の加工や複製は可能でも、生命そのものの創造は人間には絶対にできないことに気づいたとき、人は初めて真実の神の存在を知って謙虚となるだろう。
だが科学が探しだす神は、様々な人類のいう偏教[信仰する人種や民族だけを愛する]といった偏った神ではなく、大宇宙大自然を創造し、生きとし生ける全てのものを我が子として親の如く愛する真実なる神をいう。
我々の科学は本当の発明ではなく、発見にすぎなくて、宇宙が創造されたときからある真理や法則から、その英知を引き出して応用したものに過ぎないし、物理も哲理も化学も科学も、その真理は世の初めから存在していたのだ。
昔の中国で、書聖といわれ詩家として崇められた王義之は、この宇宙のこと、生命のことについて[曲水の宴]なる詩にこう記している。
悠々大象運 輪転無停際[大いなる宇宙の現象は悠々として運り、輪転して、その停まる所を知らず]と、現代の天文学者や科学者や仏教者が、宇宙も生命も悠々と自転公転の輪廻と転生を繰り返して、停止することなし。と明言することと余りにも合致している。
宗統竟安在 即順理自泰[その根源を模索し思考すれば、それは道理に順じて泰らかに動いている]とは、その根源に何があるかを求め、追求すれば、それは物事のすべての道理[真理{宇宙の意識の理、つまり神の理}]に順じて泰らかなる運行をしている。と驚くべきことに真理の深奥を簡略に述べている。
大牟造化功 満殊莫不均[大いなる造化の功、満殊 均からざるは無し]とは、大いなる創造主の仕業を観るに、万物全て、形は異なるもその理は一つと、世の中の万生万物の全ては一つのものから分かれて、その根源の理を一つにする。と真理を紐解いている。
古代の中国人の叡智は、大宇宙の実態と真理をとおして、巨大な存在であり神と呼ばれる大宇宙の意識と、言と呼ばれる意志の存在を明確にしている。大宇宙や生きとし生きるものを創造した神と呼ばれる大意識の、想像を絶する凄さや、生きる原理は一つ、と万生万物が神の意思によって創造された実体を記している。それは東洋の宇宙観や自然観は、当時の西欧とは比較にならぬほどの高度なものであることを如実に証する。