わざと古材をつかって茶室に年輪をかもしだし、一切の華美を廃した茶室の床の間に、野の花一輪を挿して野趣を出し、たとえ武士といえども太刀を軒先に立てて、にじり口から頭を低めて入り、武士といえども平等なる空間を表現して亭主と客人が対座する。

 そこでは武士も町人も平等で、共に道標なき人生と寄る辺なき人の中に生きる人間の、侘しさと寂しさを、わびとさびの心底に秘めて、心通わせ織りなす一期一会の出会いを、しみじみ、ほのぼの、と味わうことこそ茶道の本分と見つけたり。

 その境地こそ、深遠にして深淵なる境地であるが何に表そう。それは尺八でしか表現のしようもなく、一尺八寸の竹管からびょうびょうと出る、松籟の音こそ悟りそのものなのだ。

 さらに言おう、それでは人間の寂しさは何に託そうか?それは中国の古来から伝わる胡弓の音だ。胡弓のあの物悲しい音こそ人の寂しさと郷愁をそそる。

 絵の原点は何か?それは水墨画である。墨の濃淡で画く山水の幽玄は、詩情をも漂わせて他の追従を許さず、人の魂を素心に誘う。
 ともあれ明日を約束できない生命なら、今にしか生きない生命なら、その生命を価値あらしめて生きたいものだ。

 


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